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No.48
2009/12/30 (Wed) 02:18:03

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 真っ直ぐに見つめてくる瞳に、たじろいでしまう。
 何で、なんて聞かれるとは思わなかった。
「……私は、高橋が好きだから付き合っているんであって、誰でもいいわけじゃ、無いよ」
 これが本人に直接言えればいいのに、他人相手ならスラスラと出てくるのだからため息しか出て来ない。
「でも、今までそんな事一度も言いませんでしたよね?」
「それは、」
「百歩譲って理子先輩が高橋先輩を好きだとしても、高橋先輩がそうだとはとても思えないんですけど」
 ――そんな事言われるまでも無い。思わずむっと顔を顰めると、原島少年は小さく「すみません」と呟いた。
 放課後の裏庭には、誰も居ない。遠くから部活動に勤しむ生徒達の掛け声が聞こえてくるだけ。
 向かい合った私と原島少年の間には微妙な空気が広がっている。
「……高橋の気持ちがどうあれ、私は高橋だから付き合ってる。原島君とは、付き合えない」
「……」
「原島君はどうしてそこまで意地になってるの? 振られた事が無いから?」
「……それも、ありますけど」
 唇を突き出した不満げな原島君は、
「なぁんか、納得出来ないというか。諦める気持ちにならないんですよね」
なんて、駄々をこねる子供みたいな事を言う。
 思わず苦笑。
「だとしても、私の気持ちは変わらないから。ごめん」
「……とりあえずは、分かりました。でも、高橋先輩より俺の方がイイですよ絶対」
「何を根拠に言ってるの」
「だって俺の方が高橋先輩より、理子先輩の事好きですから」
 再度絡み合った視線を外したのは、彼だった。
「とりあえず、先輩達が付き合いだしたのは了解しました。でも、それだけです」
 言葉とは裏腹に、原島少年の表情は心許なかった。



 翌日のお昼休みは、皆で揃ってお弁当を広げていた。
 生徒の要望で開放された屋上はそれなりに賑わっていて、私達も暖かい陽光の下でまどろんでいた。
「気持ちいいねぇ」
 寝転がった高塚君が眠そうな声で呟く。賛同するように頷く面々を見て、私と高橋は顔を見合わせた。
 何だか色んな所から視線を送られていて、居心地が悪いのは私達だけのようだ。フェンスに背を預けて、ふぅと小さくため息をつけば、隣で高橋も同じようにする。
 カップル説を裏付けるために隣同士に座っての食事に、緊張してお弁当の味はあんまり分からなかった。
「でもやっとこさ定着してきたね、アンタ達の噂」
 にやり、と意地の悪い笑みを見せる羽田は、今日も食後にお菓子を頬張っている。
「告白も減ってきたみたいだね」
 続きを引き取って真知子。うんうん頷く菜穂の隣では、佐久間君が微笑んでいる。
「俺の時もそうだったけど、やっぱり相手が居るって結構抑制にはなるみたいだね」
「しかも相手が勝ち目無いってのも重要だよな」
「例外は居るみたいだけどねぇ?」
 私に目配せした後、羽田の視線は反対側のフェンスに移った。
 対角に位置する屋上には原島少年の姿もあって、彼は時折こちらに視線をくれては、物言いたげな表情を見せていた。今は友人らと談笑しているようである。
「どこもかしこも高橋に負けてるのにねー」
「いや、真知ちゃん。それ笑顔で言う事じゃねーからっ!!」
 思わず起き上がってまで鋭いツッコミを入れる高塚君にどっと笑いが沸く。
「寝てたんじゃねぇのかよ」
 呆れ顔の高橋は購買で買って来たカレーパンに被りつきながら言う。何時も思うけど、何時もパンばかりで健康に悪そうだ。普段自炊しているのだからお弁当くらい作ってくれば良いのに。最近私は、朝練があるからそんな時間は無い、と言う高橋に「私が作ってあげようか、自分ののついでに」と軽く言えるタイミングを何時も探しているのだけれど、今は口に出来る雰囲気では無かった。
 彼女のフリの一端で、という言い訳も用意してあるんだけどな……。
 私の葛藤なんて知らず、高橋の態度は前と全然変わらない。彼氏らしい演技をする事もないから、原島少年みたいに納得してくれない人が居るのでは無いだろうか。
 ――なんて思っても仕方が無い。
 何せ高橋は恋愛に興味のない男なのだから。
 



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