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No.47
2009/12/27 (Sun) 01:59:36

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 恋人のフリを始めて、2週間。
 当然フリだから、巷のカップルのようにラブラブイチャイチャなんて全く無い。――普通に、本気で付き合うことになったとしても、そんな雰囲気になるとも思えないけれど。
 兎に角、デートの予定だってあるわけがない。
 変わった事と言えば、メールの頻度が増えたくらいだ。
 でもそれもやっぱり甘い雰囲気なんてあるわけもなくて、友達としてのメールというわけでもない。いってしまえば、ただの報告メール。
『昨日一年に告られたから、理子と付き合い始めたからって言ったらあっさり引き下がった。すげぇ効果』
 そう高橋からメールが来たのが始まり。私なんていくら表向きの目的がソレだとしても、いざ『高橋と付き合っている』なんて口にするのは躊躇われてしまう。それが気持ちがあるか無いかの違いかと思うと憂鬱だし、ちょっとだけ腹も立つ。
 事情を知らないすーちゃんのような後輩やクラスメートに「おめでとう」なんて純粋に祝福されてしまうのも、困りものだ。
 だけれど高橋が『付き合って良かった』なんて、勿論ただの感想なのだけれど、そんな事を絵文字も何もない素っ気無いメールでも言われてしまうと、顔がにやけるのは止まらなかった。
 私もやっとこさ慣れて、昨日『彼氏がいるので付き合えません』と告白を断る事が出来た。
 羽田に付き纏う厄介な後輩程では無いけれど、彼女の言う所の【勘違いしたナルシスト野郎】が相手だった。そこそこ整った顔をしていて、恐らく中学校ではモテたのだろう。花形スポーツのサッカーを部活にしているところもその一端だろうし、一年生の間ではかなりの人気がある、というのはすーちゃんの言葉。
 私は食指が向かないな、と素直に答えたら私の周りにはイケメンが多いからそう思うのだと非難された。
 確かに、高橋や佐久間君に比べたら見劣りする。何ていうかオーラが足りない。
 でもそもそも顔云々よりまず、彼の恋愛における姿勢が気に食わない。
「俺とヤりませんか?」
 と声を掛けてきた羽田狙いの後輩をあり得ないと思ったけれど、彼もまた、何だコイツと思わせるに十分な初対面だった。
 名前を、原島勇太という。
「菅野理子先輩、俺と付き合ってくれませんか?」
 と、自分の名前を名乗った後不躾にそう言ったのは、何と登校途中の校門での事だ。周りに居るギャラリーなど意に介さず、爽やかに微笑んだその顔はまさに好青年。
 たまたま駅で一緒になって登校していた羽田は「何だお前」と不機嫌そうに言って、突然の事に固まっていた私は一秒遅れて苦笑。どちらかというと羽田の態度を嗜めるような態度になった。
 頭の回転は悪くないのだけれど、こういう突発的な事には実は弱いから、どうしていいのか戸惑った。
「一目惚れしたんです」
 羽田を無視する原島少年に、冷や汗。隣で羽田の不穏な気配。
「今彼氏いないなら、とりあえず付き合ってみてくれませんか」
 校門で私を待っていたのだ、という原島少年は、笑顔を絶やさない。羽田の悪辣な空気を前にしてそんな態度でいられる彼を、すごいと思ったのが印象に残る。大抵の人は羽田を怖い人、もしくは嫌な人と認識するのに。
 辺りには野次馬。隣には怒り心頭で「振っちまえ」とでもいうような視線を投げてくる羽田。目の前には爽やか笑顔の原島少年。
 私は「あー」とか、意味のない言葉を吐き出した後、
「悪いけど、私そういう付き合いは出来ないから」
「でも、付き合ってみないと相性がいいか分からないじゃないですか。だから、」
どうせ本気で告白しても駄目なんでしょう? と、にこりと笑いながら
「それで駄目なら諦めます。先輩も俺の思う人と違うかもしれないし」
 その瞬間の、羽田の回し蹴りは三ヶ月が経過した今でも記憶に鮮明に焼きついている。
 その発言にはカッチーンと来てしまった私だけれど、その時は羽田を止めるのが先だった。
 原島少年も流石に羽田の行動は予想の範疇外だったようで、見事に脇腹を刈り取られて膝を折った。運動神経が良いのだろう、転ぶほどの大失態は見せなかった。
「何ですか、突然!」
「お前が何だ!!」
 タイミングよく日向君が駆け寄って間に入ってくれなければ、間違いなく羽田の二撃目が放たれていた事だろう。
 ――つくづく羽田は恐ろしい女だ。
 彼女のキレの良い蹴りは、空手の段を持っている私から見てもとても素人技とは思えなかった。
 思わず野次馬から「おー」という歓声と拍手が上がって、もう何が何だか分からなくなって、日向君に引き摺られて行く羽田を宥めながら、その時はそのままなし崩しにお開きになって。
 まあそんな展開になったものだから、原島少年も関わる気を失くすのではないかと思ったのだけれど。
 以外に彼は諦めが悪かった。
「俺、結構優良物件ですよ? サッカーではある程度知名度あるから将来性もあるし。顔は、ま、そこそこモテル部類に入るかと思いますし。勉強も出来る方です」
 謙虚なんだかただの自慢なんだか、何度もチャレンジしてくる原島少年。
「そういう条件ってあんまり気にならないから」
 遠回しの拒絶は、
「でも、あるに越した事ないでしょ?」
 撃沈。
「性格次第、かな?」
「深く付き合ってみないと、性格なんか分からないですよ。だから、お試しで」
 最終的にはそっちの方向に持っていかれる。
「何でそこまで、」
と聞けば
「理子先輩の見た目って、俺の理想なんですよね。一目惚れって言ったでしょ? 中身はこれから知ればいいんだし、それで幻滅するような事があれば別れれば良いんだし。それは先輩から見ても同じ。付き合ってみて俺が対象にならないってんなら別れましょうよ。マジメに考えないで、軽いノリでいいから」
「私堅物だからそういうの無理」
「俺も納得出来ないから、何度だって言いますよ。とりあえずデートしません?」
 そんなこんなな原島少年にも、高橋と付き合うフリをする事で、断る明確な理由が出来た。

 ――出来たと思ったから、わざわざ放課後に呼び出して、彼に正式な断りを入れたのだけれど。
「彼氏が出来たから、君とは付き合えないよ」 
「高橋先輩は良くて、俺は駄目なんですか? 何で?」
 きょとんと瞳を瞬かせて、ちっとも納得出来ないと呟く君が私には納得できませんが!?


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