No.59
2010/01/28 (Thu) 01:25:22
不満がどうしても顔に出てしまう。
二人の言う通り、友達関係解消すればいいなんて思えないから、こうやって呼び出してまで羽田に相談に乗ってもらおうと考えているのに。
「嫌なんだ?」
と佐久間が真面目な口調で聞いてくるから、俺は即座に頷いた。
「……高橋君、理子ちゃんの好きな人って誰だか知ってる?」
「……いや、知らねぇけど」
「じゃあ、誰だか考えた事ある?」
「……いや……。ウチのガッコの奴なん?」
唐突な島野の質問に項を掻きながら答えると、島野は困ったように笑う。いきなりそんな話を振られた俺のほうが困ると思ったが、どうやら他の三人は別段様子を変えない。それを見ると、この話も今までの話に繋がっているという事なのだろうか。
「というか、何。お前ら理子の好きな奴知ってんの?」
聞けば、大きなため息をつかれた。一体どういう意味だ。
「こういう事、あたしの口から言ったら絶対理子ちゃん怒るだろうけど、」
「菜穂!」
躊躇いがちながら淀みのない島野の言葉を羽田が遮ろうとして、大きな目を向けられる事で黙った。
「理子ちゃんは、好きでもない人と付き合ったりしないよ」
「……」
沈黙。
明後日の方向を見つめる羽田を見てから、島野に視線を向ける。気まずそうにしながら、真っ直ぐに俺を見ている小動物のようなくりくりとした目が、まるで子供みたいだ。
しかし、その告白のどこが理子に悪い事なのかは分からない。
「そら、そうだろ……」
呆気にとられた空気から抜け出して俺が言えば、皆がぎょっと目を剥いた。
何をそう驚いているのかと不思議になって、補完する様に言葉を繋ぐ。
「だから今まで誰とも付き合って無かったわけだろ? 告白だって断り続けてたんだし、あの原島も振ってるじゃん」
何を今更、という意味で視線を巡らせても、皆表情を強張らせたままだ。
そんな空気の中、「お待たせしました」とウェイトレスが料理を運んで来て皿に並べた。
羽田が頼んだハンバーグセットと佐久間のパスタ、島野のリゾット。俺の前にはステーキセットとカキフライ。遅れて頼んだ日向の前だけ何も無い。
相当腹を空かせて居た筈の羽田は料理に手を出さず、継ぎ足された水を手に取って一気に飲み干した。
目の前で湯気の立った肉厚のステーキが、いい匂いを薫らせて、腹がぐーっと鳴る。
「とりあえず、食おうぜ」
話は後だ、と、フォークとナイフを握った。
そんな俺を無視して四人が目配せしあった後、何故だかそれぞれがおもむろに携帯を出した。
意味の分からないその行動を見ながらも、一人飯を食い出す。
カチカチ、と携帯のボタンを押す音がする。
いきなり全員で誰かにメールか? と、思った所で、全員がそのディスプレイを俺に向けてきた。
「……なんだよ?」
その顔の無表情の事。
若干身を引けば、更にずいっと携帯が目の前に差し出され。
戸惑いながらも画面を注視する。
「…………」
【鈍感は死ね】【ゲキ鈍】【理子ちゃんが可愛そう!!】【バカにつける薬は無い】
「……はぁ?」
まさに意味不明。
フォークに刺したステーキの一片を口に運びながら、目一杯顔をしかめた俺。
羽田が引っ込めた携帯をまた操作して、しばらくの後同じように俺の眼前に寄せてきた。
開いているのは、どうやら電子辞書のようだ。
【鈍感――物事に対する感じ方が鈍い様子】
「いや、だから何だよ」
「………もう、アンタには何も言う事は無い!!」
結局その後、黙り込んでしまった島野を佐久間が、キレ出した羽田を日向が送るという事で解散したが、当然のように支払いは全部俺に押し付けられた。
――全く、わりに合わない。
NEXT→
二人の言う通り、友達関係解消すればいいなんて思えないから、こうやって呼び出してまで羽田に相談に乗ってもらおうと考えているのに。
「嫌なんだ?」
と佐久間が真面目な口調で聞いてくるから、俺は即座に頷いた。
「……高橋君、理子ちゃんの好きな人って誰だか知ってる?」
「……いや、知らねぇけど」
「じゃあ、誰だか考えた事ある?」
「……いや……。ウチのガッコの奴なん?」
唐突な島野の質問に項を掻きながら答えると、島野は困ったように笑う。いきなりそんな話を振られた俺のほうが困ると思ったが、どうやら他の三人は別段様子を変えない。それを見ると、この話も今までの話に繋がっているという事なのだろうか。
「というか、何。お前ら理子の好きな奴知ってんの?」
聞けば、大きなため息をつかれた。一体どういう意味だ。
「こういう事、あたしの口から言ったら絶対理子ちゃん怒るだろうけど、」
「菜穂!」
躊躇いがちながら淀みのない島野の言葉を羽田が遮ろうとして、大きな目を向けられる事で黙った。
「理子ちゃんは、好きでもない人と付き合ったりしないよ」
「……」
沈黙。
明後日の方向を見つめる羽田を見てから、島野に視線を向ける。気まずそうにしながら、真っ直ぐに俺を見ている小動物のようなくりくりとした目が、まるで子供みたいだ。
しかし、その告白のどこが理子に悪い事なのかは分からない。
「そら、そうだろ……」
呆気にとられた空気から抜け出して俺が言えば、皆がぎょっと目を剥いた。
何をそう驚いているのかと不思議になって、補完する様に言葉を繋ぐ。
「だから今まで誰とも付き合って無かったわけだろ? 告白だって断り続けてたんだし、あの原島も振ってるじゃん」
何を今更、という意味で視線を巡らせても、皆表情を強張らせたままだ。
そんな空気の中、「お待たせしました」とウェイトレスが料理を運んで来て皿に並べた。
羽田が頼んだハンバーグセットと佐久間のパスタ、島野のリゾット。俺の前にはステーキセットとカキフライ。遅れて頼んだ日向の前だけ何も無い。
相当腹を空かせて居た筈の羽田は料理に手を出さず、継ぎ足された水を手に取って一気に飲み干した。
目の前で湯気の立った肉厚のステーキが、いい匂いを薫らせて、腹がぐーっと鳴る。
「とりあえず、食おうぜ」
話は後だ、と、フォークとナイフを握った。
そんな俺を無視して四人が目配せしあった後、何故だかそれぞれがおもむろに携帯を出した。
意味の分からないその行動を見ながらも、一人飯を食い出す。
カチカチ、と携帯のボタンを押す音がする。
いきなり全員で誰かにメールか? と、思った所で、全員がそのディスプレイを俺に向けてきた。
「……なんだよ?」
その顔の無表情の事。
若干身を引けば、更にずいっと携帯が目の前に差し出され。
戸惑いながらも画面を注視する。
「…………」
【鈍感は死ね】【ゲキ鈍】【理子ちゃんが可愛そう!!】【バカにつける薬は無い】
「……はぁ?」
まさに意味不明。
フォークに刺したステーキの一片を口に運びながら、目一杯顔をしかめた俺。
羽田が引っ込めた携帯をまた操作して、しばらくの後同じように俺の眼前に寄せてきた。
開いているのは、どうやら電子辞書のようだ。
【鈍感――物事に対する感じ方が鈍い様子】
「いや、だから何だよ」
「………もう、アンタには何も言う事は無い!!」
結局その後、黙り込んでしまった島野を佐久間が、キレ出した羽田を日向が送るという事で解散したが、当然のように支払いは全部俺に押し付けられた。
――全く、わりに合わない。
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