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No.247
2011/10/08 (Sat) 19:22:23


 妃になって間もない頃、私は囁かれる睦言にも、優しい手にも、まだ戸惑っていた。
 身体を重ねる事に二人も子供を生んだ今でも恥じらいを覚えるけれど、その頃はまだ、戸惑いばかりが大きかった。
 けれどある夜、陛下は仰った。

「どうか、アル、と」

 私の目から零れ落ちた涙を舐め取り、顎を掬い上げて。
 その青空の瞳で私を見つめ、許しをくれた。
 近づくことを、受け入れてくれた。

 その瞬間、私は確かに幸せに満たされたていた。


-------------------------


 マゼルがグランディアに召喚されたのは二十歳を迎えたばかりの冬の事だった。
 その年の事を振り返ると、彼女には何時も底なし沼に沈んで行く自分がイメージされた。今まで自分を守ってくれた優しい腕から引き離され、光輝いていた世界から突き落とされ、寒さと悲しみに喘ぎながら、叫ぶ声を失って泥に嵌っていく自分――誰の眼にも触れずただ静かに、一人孤独に朽ちていく。
 けれど沈み行く身体を掬い上げてくれた力強い腕の存在も、共に思い出された。
 全てを失った筈のマゼルに、失くした筈の全てを与えてくれた存在――それをどうして、憎く思う事が出来ただろう。
 衰弱して三日三晩生死の淵を彷徨っていたマゼルは、指先に感じた温もりだけをただ、覚えている。
 
 目覚めるその時まで繋がれていた大きな手。その手の主が、彼女の“運命”だった――。




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