No.72
2010/03/05 (Fri) 03:40:38
理子ちゃんはあたしの憧れ。
過分に誇張しすぎだと何時も理子ちゃんは苦笑するけれど、出会った中学生の頃からあたしの中で理子ちゃんは自慢の友達だった。ちゃんと地に足がついていて、揺るがない、大人で綺麗な人。どうして同い年なのにこんなに違うんだろう、って何時も思っていた。
何かあれば手を貸してくれて、守ってくれて。そんな理子ちゃんにいつか報いたいって思っていても、あたしに手助け出来る事なんて一つも無かった。
高橋君に恋をして悩んでいる理子ちゃんにアドバイスの一つも出来なければ、相談に乗ってあげる事も慰める事もしてあげられない。
出来る事が、こんな覗きみたいな、事。
屋上で高橋君と向き合って、悲痛に言葉を繋げる理子ちゃんの声を聞きながら、あたしは泣きそうになってしまう。
理子ちゃんを悲しませる高橋君なんて嫌い。
憎らしい程鈍感で、傷つける言葉や行動ばかり。顔は格好良いかもしれないけれど、理子ちゃんにはもっっと優しくて似合う人がいる、って思ってしまう。
なのに理子ちゃんの気持ちを間単に浮上させてしまえるから、ずるい。
今だって。
理子ちゃんが常に無い程切迫して、泣いているのに。優しい言葉一つかけてくれない。
理子ちゃんのストレートな告白の言葉を、ただ黙って聞いているだけ。
飛び出して間に立って、守る事があたしに出来ればいいのに。
ドアの隙間から高橋君の背中越しに理子ちゃんの泣き顔が見える。何時もだったらこっちの気配に気づく筈なのに、そんな余裕すら無いのだろう。俯く理子ちゃんの肩が嗚咽に合わせて揺れる。
高橋君なんて嫌い。
どうして理子ちゃんの気持ちに気づかないの。あんなに綺麗で可愛くて魅力一杯の女の子を、どうしてそういう風に好きになってくれないの。
理不尽に思う。
それでも理子ちゃんは高橋君が好きだって言う。恋しいんだって泣く。友達付き合いなんて嫌だって、泣いている。
一秒が長い。
屋上には理子ちゃんと高橋君二人きり。気まずい空気に堪えている理子ちゃんに、走り寄りたい。
梓ちゃんを筆頭に扉に張り付きながら、あたし達は息を殺す。
声が遠い。だけど理子ちゃんの気持ちは痛い程伝わってくるから不思議。
背中だけじゃ高橋君の気持ちは読み取れない。何時だってあの鈍感で浅慮な彼の気持ちは、伝わって来ない。意味が分からない。高橋君は、本当に、意味が分からない。
理子ちゃんが高橋君と付き合えるのが、一番嬉しい。きっとそれが幸せ。新ちゃんの親友の高橋君だから、彼と理子ちゃんが付き合ってくれれば、今後も一緒に遊んだり出かけたり出来るだろう――それは、あたしにとっても喜ばしい事。大好きな人達に囲まれて過ごせたら、きっと幸せ。
でも、と思う。
高橋君は、きっと色々難しい。恋愛なんて面倒だって言っちゃうし、多分本当にそういう恋愛面での気遣いなんて無いに等しい。
ならもう、すっぱり振ってあげて欲しい。次に行かせてあげて欲しい。
もう理子ちゃんを苦しめないで欲しい。
早く決着が付けばいいって、握りこぶしを作りながら思っていた。
長い長い、けれどたった数分。
高橋君が一歩理子ちゃんに近づいたと思ったら、彼の腕は理子ちゃんを唐突に抱きしめた。
→NEXT
過分に誇張しすぎだと何時も理子ちゃんは苦笑するけれど、出会った中学生の頃からあたしの中で理子ちゃんは自慢の友達だった。ちゃんと地に足がついていて、揺るがない、大人で綺麗な人。どうして同い年なのにこんなに違うんだろう、って何時も思っていた。
何かあれば手を貸してくれて、守ってくれて。そんな理子ちゃんにいつか報いたいって思っていても、あたしに手助け出来る事なんて一つも無かった。
高橋君に恋をして悩んでいる理子ちゃんにアドバイスの一つも出来なければ、相談に乗ってあげる事も慰める事もしてあげられない。
出来る事が、こんな覗きみたいな、事。
屋上で高橋君と向き合って、悲痛に言葉を繋げる理子ちゃんの声を聞きながら、あたしは泣きそうになってしまう。
理子ちゃんを悲しませる高橋君なんて嫌い。
憎らしい程鈍感で、傷つける言葉や行動ばかり。顔は格好良いかもしれないけれど、理子ちゃんにはもっっと優しくて似合う人がいる、って思ってしまう。
なのに理子ちゃんの気持ちを間単に浮上させてしまえるから、ずるい。
今だって。
理子ちゃんが常に無い程切迫して、泣いているのに。優しい言葉一つかけてくれない。
理子ちゃんのストレートな告白の言葉を、ただ黙って聞いているだけ。
飛び出して間に立って、守る事があたしに出来ればいいのに。
ドアの隙間から高橋君の背中越しに理子ちゃんの泣き顔が見える。何時もだったらこっちの気配に気づく筈なのに、そんな余裕すら無いのだろう。俯く理子ちゃんの肩が嗚咽に合わせて揺れる。
高橋君なんて嫌い。
どうして理子ちゃんの気持ちに気づかないの。あんなに綺麗で可愛くて魅力一杯の女の子を、どうしてそういう風に好きになってくれないの。
理不尽に思う。
それでも理子ちゃんは高橋君が好きだって言う。恋しいんだって泣く。友達付き合いなんて嫌だって、泣いている。
一秒が長い。
屋上には理子ちゃんと高橋君二人きり。気まずい空気に堪えている理子ちゃんに、走り寄りたい。
梓ちゃんを筆頭に扉に張り付きながら、あたし達は息を殺す。
声が遠い。だけど理子ちゃんの気持ちは痛い程伝わってくるから不思議。
背中だけじゃ高橋君の気持ちは読み取れない。何時だってあの鈍感で浅慮な彼の気持ちは、伝わって来ない。意味が分からない。高橋君は、本当に、意味が分からない。
理子ちゃんが高橋君と付き合えるのが、一番嬉しい。きっとそれが幸せ。新ちゃんの親友の高橋君だから、彼と理子ちゃんが付き合ってくれれば、今後も一緒に遊んだり出かけたり出来るだろう――それは、あたしにとっても喜ばしい事。大好きな人達に囲まれて過ごせたら、きっと幸せ。
でも、と思う。
高橋君は、きっと色々難しい。恋愛なんて面倒だって言っちゃうし、多分本当にそういう恋愛面での気遣いなんて無いに等しい。
ならもう、すっぱり振ってあげて欲しい。次に行かせてあげて欲しい。
もう理子ちゃんを苦しめないで欲しい。
早く決着が付けばいいって、握りこぶしを作りながら思っていた。
長い長い、けれどたった数分。
高橋君が一歩理子ちゃんに近づいたと思ったら、彼の腕は理子ちゃんを唐突に抱きしめた。
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