高橋が言葉を連ねる程に、惨めになる。
高橋が必死になればなる程、虚しくなる。
本来だったら、愛想をつかされるのはこちらの方だろう。ここまで平身低頭に謝罪をする価値がある、人間ではないはずだ。面白みもない、意固地で、面倒な、知り合って久しくも無い、簡単な付き合いの友達。趣味や話題が合うわけでもない、一緒に居ればそれなりに楽しいものの、顔を突き合わせれば笑い合うより言い合いの方が多いような関係だ。
自分の性格を自覚しているからこそ、それでも友達で居たいと言ってくれるのは有難いし嬉しい。
けれど、違うのだ。
こんな風に友達関係に執着されればされるだけ、自分の恋愛感情が置いてけぼりにされる。
高橋が続けたいのは友人としての関係で、けしてこちらを恋愛相手として見る気は無いのだと――色恋に興味がないのだと分かっていても、高橋の言葉を聞けば聞く程、苦しくなる。
何て的外れな言葉。
怒っているわけでは無いから、許すも許さないも無い。殴っても罵倒しても気が済まない。余計に悲しくなるだけ。
キスをされた事なんてどうでもいい。周りに人が居たのなんて気にならない。
そんな事じゃないのだ。
高橋が私に抱いている感情が、友情だけだと実感する度に、心が痛い。泣きたくなる。
勝手な主張だと分かっている。
必死になる余りに、私を抱きしめるような格好。体温を感じそうな距離に、胸を高鳴らせているのは私だけなのだ。
何気なく肩に触れる手が憎らしくて叩き落とす。
目を見開いて高橋が若干身を引いたその隙に、高橋から大きく距離を取った。
悔しくて涙が出る。噛み締めた唇から漏れる息のなんてか細いこと。
お願いだからもう何も言わないで欲しい。もう分かったから。もう十分傷付いた。もう何も言わないで欲しい。
高橋の口を止めたいが為に、私は言葉を振り絞る。
握り締めた掌に汗が滲む。
責める言葉になってしまうのは許して欲しい。自分善がりな言動も大目に見て欲しい。
「馬鹿っ! 無神経! 鈍感!!」
逃げたくなる身体を必死に奮い立たせている。
気を緩めたら泣き喚きそうな顔を逸らさないように、高橋を睨んでしまう。
目に涙をためながら、それでも精一杯虚勢を張って。端から見たらさぞ今の私は滑稽だろう。
戸惑う高橋の姿を視界に捉える。
ああ、本当になんで。
何で君なんかが、こんなに。
「君の友達で居るのはしんどい」
言葉尻が、震えてしまう。
けれどもう一息と、私は腹に力を入れる。
見つめる先の高橋は、茫然と突っ立っている。
大きく息を吸い込んで、
「私は君が好きだから、君と友達ではいられない」
これ以上傷付くのは嫌。
小さく呟いた後は、もう、涙を塞き止める力を失くしてしまった。
ぽろぽろと滑り落ちていく涙を拭おうと拳を緩めたら、もっとひどくなった。掌で目を擦れば化粧が剥げ落ちる感触がした。けれど当然そんな事に構っていられる余裕なんかなかった。
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