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No.266
2012/08/03 (Fri) 01:08:23

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「そろそろ解散しようかな」

 ――そう、イルミナがイルミナティの終幕を宣言したのは、街にクリスマスソングが流れるような時期だった。
 自分の転換期は冬なのだろうか、と他所事の様に考えたクラウスとは違って、お前がスカウトしたくせにと憤った仲間は多かった。
 イルミナティは居場所の無いラピスラズリ患者の巣窟だった。
 その上闇の中を暗躍し、手を血塗れにしてきた人間だ。
 今更何所へ行けばいいのか、と、悲嘆に暮れも絶望しもするだろう。
 クラウスは、構わなかった。
 既にイルミナティに入った目的は、半分以上達成した。
 イルミナを潰す事は出来なかったが、今のイルミナにそれを望むのは馬鹿らしかった。 
 肺を病んだイルミナが、急速に衰えた今となっては、その彼に勝つ事に何の意味があるだろう。全盛期の彼が相手でなければ、意味の無い事だった。
 その代わり、と言っては何だが、組織の中で第三位の実力を示した今となっては、当初の目的は殆ど意味を持たなかった。
 イルミナは、いわばラピスラズリの初期の患者だ。その病が確実化されるよりも早く、身の内にバグを抱えていた。彼が世界から排泄されて闇の世界に身を浸したのは、随分昔の事だ。
 長い事ラピスラズリを服用してきた体は、当の昔に蝕まれていた。
 この頃、ラピスラズリの第一世代である患者の多くが、立て続けに亡くなるというニュースが相次いで報道されていた。
 イルミナもまた、その例に漏れない。
 余命幾許かの身で、自身の作り上げた組織の未来を、淡々と告げた。
 僅か一月後に、イルミナはこの世を去った。

 それでも、イルミナの右腕であったサウロは、残された仲間の身が心配だったのだろう、組織を存続させると決めたようだ。
 剣は残ったと聞いた。
 クラウスは、組織を去った一人だった。
 クレイジードッグの名で、その後も殺しの依頼は尽きない。

 数えて16歳のクラウスは、立派に、闇の世界で生きていた。

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