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No.255
2012/01/26 (Thu) 01:59:22

人を裁けるのは事実だけ。 続き。

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 ナポリにあるロッティ家のオフィスに、その日フレンツォは居た。
 私室を宛がわれているその兄リカルドは、パソコンから目を離す事なく弟の喚き声を聞いていた。
「何で分かんないのよ!?」
 野太い声が紡ぐ女言葉は、声よりもリカルドの癪に障る。犬の吠え声の方が可愛げがあるだろう。
 少年時代のフレンツォは三兄弟の中では線も細く、少女と見紛う美少年だった。特に、三人並べば間違いなく、フレンツォは妹と間違われた。二人の兄は骨格がしっかりしていて体格が良い上に、目鼻立ちがきりりとして男らしく、それに比べるとフレンツォは貧弱な程に細く、全体的に丸みを帯びていた。
 それは勿論子供だったからだろう。成長期を迎えれば無駄ににょきにょきと伸び、肩は張り出し、顔の輪郭は鋭く、それがまた首の太さを印象付ける。今ではもう昔の面影は無い。
 次男のアントニオがリカルドの身長を越したのは早い段階で、元から体格が自分より良かったアントニオの成長振りをリカルドは当然と受け止めた。しかし、フレンツォに身長が抜かれた時には、何とも言えない気分になったのをリカルドは思い出す。
 可愛かった弟は、今では立派な伊達男。にも関わらず、何を思ったか女言葉を繰るようになって、それが見た目を大いに裏切っている。
「女みたいにキーキー騒ぐな」
「ま、それって偏見よ、偏見!!」
 憤っていても、数年前から始まった口調が変じることは無い。
「……うるさい」
「騒ぎたくもなるわよ、しょうがないでしょ!!」
 豹柄のシャツに、ラメの入った紫色のスーツ、蛇皮の靴。色の濃いサングラスを胸ポケットに突っ込んだ、柄も趣味も悪い井出立ちながら――不思議とそれがしっくり来てしまうフレンツォ。
 全く、泣けてくる。
「何度も言っているだろう。クリスは行方不明。以上」
「冷たい!! 冷たいわよ、リカルド!!」
 フレンツォが机に両手を突くと、その上のパソコンが小さく跳ねた。その振動を受けて、リカルドまでもが怯えたように跳ねる羽目となった。
「あの子はねぇ、私達の可愛い弟なのよ!? その弟が酷い目に合っているっていうのに、貴方って人は!」
「酷い目っていうのは、お前の妄想だろう。――ああ、もう落ちつけ」
 もう一度拳を振り上げたフレンツォに大仰にため息をついたリカルドだが、それはフレンツォの怒りを助長させるだけだ。
「面倒くさい」
 その後に続けた台詞も悪かった。
「っもういいわ! 兄貴には頼らない!!」

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